心理コラム
比べたあと、なぜ自分の価値まで下がった気がするの?
友達の昇進を聞いたとき、素直に「すごいな」と思えたのに、家に帰ってから少しだけ落ち込んだ。
SNSで同年代の楽しそうな投稿を見て、「いいな」と思っただけのはずが、いつの間にか「それに比べて私は……」と考えている。
人と自分を比べることがあっても、その気持ちがすぐに消える日もあります。反対に、たった一度の比較が、その日の気分だけでなく、自分自身の評価まで揺らしてしまうこともあります。
この違いは、どこから生まれるのでしょうか。
「負けた」と「自分には価値がない」は同じではない
誰かと比べて、「今回は自分のほうができなかった」「あの人のほうが評価されている」と感じることはあります。
でも、本来これはその場での比較です。
仕事なら仕事、見た目なら見た目、恋愛なら恋愛。その一部分について差を感じているだけとも考えられます。
ところが、比較がつらくなるときは、その差が別の意味に変わっていることがあります。
「あの人のほうが仕事ができる」
と感じたことが、
「私は仕事ができない」
さらに、
「私はたいした人間じゃない」
というところまで広がってしまう。
ここでは、相手との差だけを見ているのではありません。比較した結果を使って、自分全体の価値まで決めようとしています。
だから、同じ「負けた気がする」という経験でも、痛みの大きさが違ってくるのです。
欲しいのは「勝つこと」なのか、「安心すること」なのか
比較して苦しくなったとき、「もっと頑張らなきゃ」と思うことがあります。
もちろん、それ自体がおかしいわけではありません。
誰かを見て刺激を受けたり、負けたくないと思ったりすることが、行動するきっかけになることもあります。
ただ、頑張って結果を出しても、すぐにまた別の誰かと比べてしまうなら、少し違うものを求めている可能性があります。
本当に欲しかったのは結果そのものではなく、
「これなら認めてもらえる」
「これなら自分も大丈夫だと思える」
という安心だったのかもしれません。
ここで一度、「私はこれが欲しいのか、それとも、これを持っている自分なら認められると思っているのか」と分けて考えてみると、同じ目標でも見え方が変わります。
認められたい気持ちまで否定しなくていい
人から褒められたらうれしい。
好きな人にはよく思われたいし、仕事を頑張ったら評価されたい。
そんな気持ちまでなくす必要はありません。
見ておきたいのは、他人の評価を参考にしているのか、それとも他人の評価がないと自分の価値まで分からなくなってしまうのか、という違いです。
たとえば、褒めてもらえなかった日に、
「今回は評価されなかったな」
と思うだけなら、その出来事について考えています。
一方で、
「評価されなかった。やっぱり私はダメなんだ」
と感じるなら、出来事への評価と自分自身への評価が強く結びついているのかもしれません。
同じように見える「認められたい」という気持ちでも、そのあと自分をどう扱っているかによって意味は変わってきます。
なぜ特定の人と比べたときだけ苦しくなるのか
誰と比べても同じようにつらくなるとは限りません。
まったく知らない人の成功は気にならないのに、同年代の友達の成功には焦ってしまう。
仕事では人と比べても平気なのに、恋愛になると急に周りが気になる。
そんな違いがあるなら、「私は比較しやすい性格だから」とまとめてしまう前に、何が引っかかっているのかを見る余地があります。
年齢、仕事、収入、恋愛、外見、人間関係。
自分が「こうでありたい」「ここでは認められたい」と強く思っている部分ほど、他人との差が大きく感じられることもあります。
つまり、比較相手を見ることは、自分が何を大事にしているのかを知る手がかりにもなります。
ただし、そこで見つかるものが、本当に自分の望みとは限りません。
「私はこれが欲しい」のか。
それとも、
「これがないと周りより劣っている気がする」のか。
似ているようで、この二つは少し違います。
比較をやめるより、比較の「その先」を見る
人と比べないようにしようとしても、完全にやめるのは簡単ではありません。
だから、比較した瞬間だけを問題にしなくてもいいのかもしれません。
誰かを見てモヤッとしたとき、そのあと頭の中で何が起きているでしょうか。
「あの人はすごい」で終わっているのか。
「自分もやってみたい」と思っているのか。
「負けたくない」と感じているのか。
それとも、
「あの人より下なら、自分には価値がない」
というところまで進んでいるのか。
同じ比較でも、その先に続く考えは同じではありません。
比較する自分を責めるより、その比較が自分についてどんな結論を出そうとしているのかを見る。
すると、「人と比べてしまう」という一つの悩みの中にも、自分が本当に気にしていたものが少しずつ見えてきます。
誰かより上か下かという答えよりも、
その比較のあと、自分まで否定する必要が本当にあるのか。
まずはそこを切り離して考えることが、比較に振り回されにくくなる一つの入り口になるかもしれません。
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