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心理コラム

褒め言葉を受け取ると、自分を高く見積もることになる?

「その服、似合ってるね」と言われて、うれしかったはずなのに、「いや、全然そんなことないよ」と返してしまう。

仕事を褒められても、「今回はたまたまです」「ほかの人に助けてもらったので」と、自分から理由を足して評価を小さくする。

そんなとき、心のどこかに「そのまま受け取ったら、自分を高く評価しすぎることになる」という感覚があるのかもしれません。

でも、褒め言葉を受け取ることと、自分を過大評価することは同じなのでしょうか。

「そう見えた」と「私はそういう人」は同じではない

たとえば、友人から「話しやすいね」と言われたとします。

その言葉を受け取るために、「私は誰とでもうまく話せるコミュニケーション能力の高い人間だ」とまで考える必要はありません。

残せるのは、もっと小さな事実です。

少なくとも、その友人には自分との会話が話しやすく感じられた。

仕事で「説明がわかりやすかった」と言われたときも同じです。

「私は説明が得意な人間だ」と、自分全体の評価まで変える必要はありません。

その日の説明について、相手にはわかりやすく感じられる部分があった。その程度の受け取り方もできます。

褒められた行動を認めることと、自分という人間全体を高く評価することの間には、かなり距離があります。

褒め言葉に「次も」を足しているのは誰だろう

褒められた瞬間はうれしかったのに、少しすると急に重くなることがあります。

「次も同じくらいできるかな」

「今度失敗したら、期待外れだと思われそう」

「本当はそこまでできる人じゃないのに」

ここで一度分けてみたいのが、実際に言われたことと、そのあと自分の中で付け加わったことです。

「今日の発表、わかりやすかったよ」

相手が言ったのは、ここまでかもしれません。

そこに、

「次の発表も同じレベルでなければならない」

「もう失敗してはいけない」

「これからも相手の期待に応え続けなければならない」

という意味まで含まれているとは限りません。

今の自分への評価と、これからの自分に課す条件は別のものです。

褒め言葉が重く感じられたときは、言われた言葉そのものより、自分がその先に何を付け加えているかを見ると、負担の正体が少しわかりやすくなります。

「信じる」か「否定する」か、すぐに決めなくてもいい

もちろん、褒め言葉なら何でも正しいとは限りません。

よく知らない相手から大げさに褒められれば、「本当にそうかな」と感じることもあります。相手との関係や状況によって、同じ言葉でも受け取り方は変わります。

だからといって、選択肢が「全部信じる」と「全部否定する」の二つだけとは限りません。

「自分ではまだよくわからないけれど、この人にはそう見えたんだな」

そんなふうに、結論を出さずに置いておくこともできます。

これは相手の評価を真実だと認定することではありません。

反対に、自分がこれまで持っていた自己評価だけを正解にして、新しく入ってきた情報をその場で捨てないということでもあります。

「いやいや」と返した理由は、いつも同じとは限らない

褒められたときに否定するからといって、必ずしも自分を低く評価しているとは限りません。

単純に照れくさかったのかもしれません。

注目されること自体が苦手だったのかもしれません。

相手との関係上、少し控えめに返しただけかもしれません。

あるいは、本当にその評価には納得できなかったのかもしれません。

同じ「そんなことないよ」という言葉でも、その前後に何を感じていたかで意味は変わります。

気になるなら、否定したという行動だけを見るより、その直前に浮かんだことを振り返ったほうが、自分の反応を理解しやすくなります。

「恥ずかしい」が近かったのか。

「そんなふうに思われると困る」だったのか。

それとも、「認めたら調子に乗っているみたいで嫌だ」だったのか。

ここが違えば、同じ褒め言葉でも感じる重さは変わります。

自分についての情報は、自分の中だけにあるわけではない

自分の苦手なところは、普段から何度も目につきます。

言えなかった一言も、失敗した場面も、「もっとできたはず」と思った瞬間も、自分はよく知っています。

一方で、自分にとって当たり前になっていて気づきにくい部分を、ほかの人が先に見つけることもあります。

だからといって、他人から言われたことをそのまま自己評価に採用する必要はありません。

ただ、最初から削除する必要もありません。

「自分では普通だと思っていたけれど、あの人にはここが良く見えた」

そのくらいの情報として残しておくことはできます。

自分について知っていることが増えたからといって、自分を大きく見せることにはなりません。

むしろ、自分が見ていた面だけで自分全体を決めずに済むようになります。

褒め言葉は、自己評価の答えにしなくていい

褒められたとき、「本当にその通りだ」と思えなくても問題はありません。

相手の言葉を受け取るために、自信のある人になる必要もありません。

「ありがとう」と返したあとで、心の中ではまだ半信半疑でもいいのです。

その評価がどこまで自分に当てはまるのかは、あとから考えることができます。

受け取ることと、信じ切ること。

一つの良い部分を認めることと、自分全体を高く評価すること。

この二つを同じものにしなければ、褒め言葉は少し扱いやすくなります。

次に誰かから良いことを言われたとき、すぐに「そんなことない」と消したくなったら、その場で自分の評価を決め直さなくてもかまいません。

「この人には、そう見えたんだな」

まずは、その情報をそこに置いておく。

それだけでも、これまで自分が知っていた自分とは少し違う姿が見えてくるかもしれません。

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