心理コラム
断りたいのに「いいよ」と言ってしまうのはなぜ?頼まれた瞬間の気持ちをたどる
「本当は今日は余裕がない」
そう思ったはずなのに、頼まれた瞬間に「いいよ」と答えてしまう。
その場では相手がほっとした顔をして、自分も少し安心する。けれど、あとになって予定が苦しくなったり、「やっぱり断ればよかった」とモヤモヤしたりする。
こうしたとき、「自分は気が弱いから」「自信がないから」と性格の問題にしたくなることがあります。
でも、断れないという同じ行動でも、そのとき心の中で起きていることは一つとは限りません。
「やりたくない」の次に、何を考えている?
頼みごとをされた瞬間、最初は「ちょっと厳しいな」と感じていたとします。
ところが、その気持ちを伝える前に、
「断ったらがっかりするかな」
「感じが悪いと思われないかな」
「これくらい引き受けたほうがいいのかな」
と、相手の反応を先に考え始めることがあります。
すると、「自分は引き受けたいか」という判断より、「断ったあとの空気をどうしよう」という心配のほうが大きくなっていきます。
最終的に「いいよ」と答えたとしても、それは必ずしも心から引き受けたいと思った結果とは限りません。
断ることそのものより、その先に起こるかもしれない気まずさを避けたかった可能性もあります。
相手が変わると、断りやすさも変わる
断るのが苦手だからといって、誰に対しても同じように断れないとは限りません。
友達から「今度これ手伝って」と言われれば断れるのに、親しい人から頼まれると難しい。
一度きりのお願いなら断れるのに、職場でいつも関わる相手には言いにくい。
反対に、家族には言える「今日は無理」が、まだ距離のある相手には言えないこともあります。
ここを見ると、「断れない性格」という一言だけでは説明しきれない部分が見えてきます。
相手との距離、これからも続く関係、断ったあとの空気、立場の違い。何を負担に感じるかによって、同じ人でも答えは変わります。
だから「私は断れない人なのか」と考えるより、「私は誰に、どんな場面で断りにくくなるのか」と見ていくほうが、自分の傾向をつかみやすくなります。
優しくしたい気持ちと、断れない気持ちは同じ?
誰かのお願いを引き受けること自体が問題なのではありません。
少し面倒でも、「この人のためなら手伝いたい」と思って引き受けることもあります。
一方で、
「本当は引き受けたくない。でも断るのが怖い」
「嫌われたくないから、とりあえず受けておこう」
という気持ちで引き受けることもあります。
表面上はどちらも同じ「いいよ」です。
違いが見えやすくなるのは、そのあとかもしれません。
自分で納得して引き受けたときは、多少大変でも「今回は手伝おう」と思えることがあります。
反対に、自分の気持ちを置いたまま引き受けると、「どうして私がやるんだろう」「また断れなかった」と後悔が残ることがあります。
もちろん、後悔したからといって必ず無理をしていたとは限りません。
ただ、同じようなモヤモヤが何度も続くなら、「優しくしたかったのか」「断ることを避けたかったのか」を振り返ってみる余地はあります。
「頼みごとを断る」と「相手を拒絶する」は別のこと
断りにくさの中には、お願いを断ることと、その人を拒絶することが重なって感じられている場合もあります。
けれど、
「今日は予定があって難しい」
と伝えることと、
「あなたとは関わりたくない」
と伝えることは同じではありません。
頼まれた内容には応えられなくても、相手との関係まで否定する必要はありません。
ここを分けて考えられると、断るときの選択肢も少し増えます。
何でも引き受けるか、冷たく突き放すか。
その二択だけではなく、
「今回は難しい」
「今日はできないけど、別の日なら大丈夫」
のように、自分ができる範囲を伝える方法もあります。
断る内容を曖昧にしないことと、相手への言い方をきつくすることも別です。
「どう断るか」の前に見ておきたいこと
断るのが苦手だと、「上手な断り方」を探したくなります。
もちろん言い方を考えることも役立ちます。
でも、その前に一度だけ確認してみたいことがあります。
頼まれた瞬間、自分は何を一番心配していたのか。
相手をがっかりさせることなのか。
嫌われることなのか。
気まずくなることなのか。
それとも、自分自身が「このくらい引き受けるべきだ」と思っていたのか。
ここが違えば、同じ「断れない」でも向き合うポイントは変わります。
そして、自分が何を守りたいのかが分かってくると、「今回は引き受ける」「今回は断る」という判断にも理由を持ちやすくなります。
次にまた「本当はちょっと嫌だけど、いいよと言ってしまいそう」と感じたとき。
すぐに自分を「断れない人」と決める前に、返事をする直前に何を心配したのかを思い出してみてください。
そこには、断り方のテクニックだけでは見えなかった、自分が人間関係で気にしているものが表れているかもしれません。
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